新NISAは「早い者勝ち」ではありません
金融庁の速報値では、2025年12月末のNISA口座数は約2,826万口座、2024年以降の累計買付額は約71兆円まで増えています。利用者が広がっているのは事実ですが、周りが始めているからといって、焦って同じ金額を投じる必要はありません。
NISAは、投資の利益が非課税になる制度です。預金のように元本が保証される商品ではなく、NISA口座を作っただけで資産が増えるわけでもありません。中で何を買うか、いつ使うお金を投じるかによって結果は変わります。
公式資料:数値は金融庁「NISA口座の利用状況に関する調査結果」に基づきます。最新の公表値は金融庁のNISA特設ページで確認できます。
60代の強みは、若い人より多く投資することではありません。年金見込額、退職金、住まい、今後の生活費が見え始めているからこそ、目的に合わせて金額を決められることです。始めるかどうかの判断を、年齢だけで止めないことが大切です。
始める前に確認したい3つの条件
新NISAを始める前に、次の3条件を確認してください。どれか一つでも曖昧なら、投資額を決めるのはその後で構いません。
| 確認する条件 | 判断の目安 |
|---|---|
| 生活防衛資金 | 日常生活や急な医療費に使う現金を、投資とは分けて確保できているか |
| 投資期間 | 少なくとも10年前後、途中で慌てて売らずに置けるお金か |
| 値下がり耐性 | 100万円が一時70万円になっても、生活に困らず持ち続けられるか |
条件1:近いうちに使うお金を入れない
住宅の修繕、車の買い替え、子や孫への援助、介護や医療など、数年以内に使う予定のお金は現金で残します。投資に回すのは、相場が下がっても売らずに待てるお金だけです。
条件2:運用と取り崩しをセットで考える
60代は「何年増やすか」だけでなく、「いつから、毎月いくら使うか」まで考える必要があります。65歳から使うお金と、75歳以降のために残すお金では、取れるリスクが違います。
条件3:下落率を金額で想像する
株式のインデックスファンドでも、短期間に20%から30%以上下がることがあります。割合では平気に見えても、1,000万円なら300万円の含み損です。その画面を見ても積立を続けられる金額から始めましょう。
NISAを急がない方がよい例:生活費が毎月赤字、数年以内に使う予定のお金しかない、借入返済を優先すべき、値下がりすると眠れなくなる。この場合は、投資より先に家計と現金の整理が必要です。
60代の最初の一歩は小さくていい
条件を確認して「少しなら始められそう」と思ったら、最初から年間枠を埋める必要はありません。新NISAには、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円ありますが、これは上限であって目標ではありません。
たとえば、月1万円の積立から始め、値動きに慣れた半年後に2万円へ増やす。まとまった資金があっても、いきなり全額を入れず、数回に分ける。これで十分です。
最初の目標は、大きく増やすことではありません。下がった時にもやめずに続けられる仕組みを作ることです。
商品選びより先に決めること
初心者の方は、商品を何本も持つより、広く分散された低コストのインデックスファンドを軸にした方が管理しやすくなります。代表例として全世界株式型の投資信託がありますが、全員に同じ商品が合うわけではありません。
商品名を決める前に、次の順番で考えてください。
- 現金で残す金額を決める
- 毎月積み立てても生活に影響しない金額を決める
- 何歳から使い始めるかを決める
- その条件に合う商品を選ぶ
逆に、「人気ランキング1位だから」「銀行で勧められたから」「今すぐ枠を埋めないと損だから」という理由だけで買うのは避けましょう。NISAは一度に満額を使わなくてもよく、非課税保有限度額は生涯で1,800万円です。自分のペースで使う制度です。
制度の確認:NISAの年間投資枠や非課税保有限度額は、金融庁のNISAを知るで確認できます。金融機関や商品の手数料・サービス内容は変更されるため、申込前に公式情報を確認してください。
まとめ:今日やることは一つだけ
60代で新NISAを考える時の要点
- 周りの利用状況で焦らない
NISAは早い者勝ちではなく、家計に合う金額で使う制度です。 - 生活防衛資金・期間・値下がり耐性を確認
近く使うお金は投資せず、長く置けるお金だけを分けます。 - 少額から始めて見直す
満額より、下落時にも続けられる積立額を優先します。
今日やることは、証券口座へ入金することではありません。紙に「今後5年以内に使うお金」と「10年以上使わないお金」を書き分けてください。投資に回せる金額が見えたら、そこから初めて新NISAを検討します。
始めるのが遅いかどうかより、無理な金額で始めて途中でやめてしまう方が問題です。60代には60代のペースがあります。小さく始め、暮らしと気持ちに余裕を残しながら続けていきましょう。
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