楽観のなかにこそリスクがある
2024年ごろには「AIバブルが弾けるのでは」「景気後退が来るのでは」という不安がちらほら聞かれました。ところが結果は、2024年も2025年も世界株は大きく上昇。S&P500に至っては3年連続の上昇という、歴史的に見ても珍しい記録になりました。
ただ、主力ハイテク企業群(いわゆるマグニフィセント7)の勢いは鈍化しつつあります。これらの利益成長率は、2025年の約21%から2026年には19%へ減速する見込みです。一方で、それ以外の約493社の利益成長率は、2025年の7%から2026年には11%へ上昇すると見られています。
少し不思議だと思いませんか。主力ハイテクが急成長していた時期に「バブルでは」と言われ、成長が鈍化する2026年には「安心だ」とされている。これは「これまで上がってきたから今後も上がる」という典型的な楽観(モメンタム)心理です。この安心感こそが、最も警戒すべきリスクだと考えています。
伝説的な投資家ジョン・テンプルトンは「強気相場は悲観のなかに生まれ、懐疑のなかで育ち、楽観のなかで成熟し、幸福感のなかで消えてゆく」と語りました。今の市場は、悲観でも懐疑でもなく、楽観に近い局面に見えます。
誤解しないでほしいのですが、「今すぐ全部売って逃げよう」と言いたいわけではありません。ただ、皆が油断しているときに予期せぬ悪材料が出れば、市場は一気に下落する可能性があります。その準備はできていますか、と問いたいのです。2026年は、思うように資産が増えず投資をやめてしまう人が増えるかもしれない——本気でそう感じています。
新NISA3年目の「買い疲れ」リスク
まず考えたいのが、新NISA3年目の崖です。新NISAは年間360万円、最短5年で生涯投資枠1,800万円を埋められる制度です。2024年・2025年は「今年も満額埋めた」という報告が目立ちました。ここで懸念されるのが、個人の手元資金の枯渇です。貯金を使って早めに枠を埋める動きは、最初の2年ほどで一巡してしまう可能性があります。
イギリスISAの教訓
参考になるのが、日本のNISAのモデルになったイギリスのISAです。2014年に拠出枠が拡大された際、年間の拠出額は572億ポンドから1年で832億ポンドへ急増し、2年目も高い水準を維持しました。ところが3年目には615億ポンドまで急減。最初の2年で投資できるお金を出し切り、3年目に燃料切れを起こした形です。
これは日本にも当てはまり得ます。年360万円を3年続ければ1,080万円。日本の家計全体では2,286兆円もの金融資産があり、うち半分以上が現金・預金ですが、その多くを保有しているのは高齢の富裕層です。生活防衛費や不動産を除いた純粋な余剰資金で1,000万円を3年続けて出せる人は、実は多くありません。
直近2年の上昇相場で無理に投資を続け、手元の余力を使い切ってしまった人は少なくないかもしれません。もし2026年以降に暴落が起きて株が割安になったとき、「今が買い時だ」と思っても買う資金がない——これは精神的にとてもつらい状況です。
大切なのは、燃料切れのケースを事前に想定できているかです。暴落しても落ち着いて積立を続けられるか、あるいはそのとき現金を投入して買い増せる余裕があるか。ここで10年後の資産額に大きな差が出ます。周りが「満額投資しました」と言っていても流されず、もし生活防衛費に手をつけそうなら、今すぐ計画を見直しましょう。投資はマラソンです。まずは生き残ること。自分の資金の体力を冷静に確認してください。
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公式LINEで無料相談する米国株の見通しとリスク
次に、主戦場である米国株の見通しです。米国経済の動向は全世界に波及するため、その現状を把握することは投資家にとって重要です。一般的な見方としては、2026年も米国経済は景気拡大を維持するとされています。大型の減税・歳出法案による還付金が年央以降に増え、個人消費を押し上げる効果が期待されているからです。設備投資を促す企業向け優遇措置も追い風とされています。
楽観できない理由
ただ、楽観しきれない面もあります。還付金による消費の押し上げ効果は年後半にかけて薄れていくと見込まれます。関税政策は諸刃の剣で、特に中小企業には輸入コスト増の重しとなり得ます。失業率はじわりと上昇傾向にあり、「株価は上がるのに暮らし向きは良くならない」という格差への懸念も強まっています。
そして何より、AI関連への過剰な期待です。AIが本当に期待どおりの利益成長をもたらすのか——もし市場が「思ったほど儲からない」と気づいてしまえば、関連銘柄は適正な水準まで売られる可能性があります。総合すると、エコノミストの予測は2026年の米実質GDP成長率を2%前後、「好況でも不況でもない、堅調なトレンド成長」と見るのが優勢です。
大切な視点:オルカンやS&P500に投資している方ほど、「特定のシナリオに賭ける」考えは避けたいところです。今の世界は複雑で、マクロ経済を正確に予測できる人はいません。だからこそ、やるべきは予測ではなく対策。「もし下落したらどう動くか」を想定した資産配分が、何より重要です。
円高リスクへの備え方
リスクヘッジで避けて通れないのが、為替、とくに円高リスクです。2025年後半は財政懸念などから円安が進みましたが、これは「強いドルが買われた」というより「円が弱すぎた」面が大きい。実際、ドルはユーロやスイスフランに対しては売られていました。
現時点では円安トレンドが続いていますが、変化の芽も出ています。日銀は過度な円安を是正するため利上げ路線を維持しており、実質賃金がマイナスから脱却する可能性も出てきています。もし国内消費が活発になり日本経済が見直されれば円が買われ、利上げで円金利が上がれば円売り圧力も和らぎます。そうなると円高方向に振れます。
円高になると、S&P500やオルカンなど外貨建て資産の円換算額は目減りします。株価が変わらなくても、ドル円が155円から145円になるだけで資産価値は約6.5%減る計算です。これは無視できないリスクです。
円建て資産で安定感を高める
そこで意識したいのが、円建て資産をポートフォリオに一定割合組み込むことです。円建ての日本株は、円安でも円高でも為替の影響を直接は受けません。為替を気にしなくてよい分、精神的にも楽になります。日本企業の資本効率の見直しなど、見直しの余地もまだあると考えられます。実際、2025年は日経平均がS&P500やオルカンを上回るパフォーマンスを見せた年でもありました。
取り入れ方としては、日経平均などに連動するインデックスファンドを通じて、円建ての日本株に幅広く分散するのが手軽で再現性の高い方法です。配当に着目したい場合も、個別銘柄を選び抜くより、高配当株を幅広く組み入れたインデックス(高配当株ファンド)を使えば、1銘柄に偏らずインカムも取りに行けます。円高で米国株の評価額が下がっても、円建て資産から配当が入ってくる——この心の余裕が、長期投資ではとても重要です。
ここで挙げているのは、いずれも資産クラス(円建ての株式・高配当株インデックスなど)の一般的な考え方です。特定の個別銘柄を選ぶことをすすめるものではありません。
まとめ
2026年を退場せずに歩くための型
- 楽観のなかにリスクがある
市場が安心しきっている今こそ警戒する。 - 買い疲れに注意し、余力を残す
新NISA3年目。暴落時に買える現金を確保しておく。 - 予測ではなく対策をする
「もしこうなったら」を想定した資産配分を組む。 - 円建て資産で安定感を高める
円高リスクに備え、円建ての株式や高配当株インデックスを一定割合組み込む。
2026年は、世界経済の成長鈍化や新NISAの買い疲れで、個人の投資余力が尽きるリスクがあります。市場が楽観的な今こそ警戒し、円高リスクには円建て資産で備える。そして何より、周りの声に流されず、自分の資金の体力に合わせて退場しない投資を続けること。これに尽きます。1年先より10年先を見て、一緒に賢く資産を育てていきましょう。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の推奨ではありません。投資判断はご自身のリスク許容度に応じて行ってください。