3年連続で上がり続けた米国株の現在地
まず現在地を確認しましょう。S&P500の年間騰落率は、2023年がプラス24.23%、2024年がプラス23.31%、2025年がプラス16.39%。なんと3年連続の二桁上昇です。仮に2023年の年始に1,000万円を入れていたら、今は約1,800万円。たった3年で1.8倍になった計算です。
でも、これって歴史的に見るとかなり異例なんです。S&P500の過去30年の年平均リターンは配当込みで約10%程度。それが3年連続の二桁、しかも2年は20%超え。毎年これが当たり前だと思っていたら、もう感覚が麻痺しています。
PERで「今の株価が高いのか」を測る
では今の株価は高いのか安いのか。ここで使うのが「PER」という指標です。PERは、その会社が今の利益の何年分の値段で買われているかを表す数字です。
自動販売機で例えましょう。年に10万円稼ぐ自販機があったとして、A台は100万円で買えるならPERは10倍。同じく年10万円稼ぐB台が300万円なら、PERは30倍です。同じ稼ぎなのにB台は30年分の値段。普通ならBは選びませんよね。これが「PERが高い=割高っぽい」と言われる理由です。目安は、10倍なら安め、15〜20倍でふつう、25倍以上はかなり高め、と覚えておけばOKです。
ブルームバーグの公式指数データによると、現在のS&P500の実績ベースPERは約27.6倍。将来の利益予想をもとにした予想ベースでも約22〜23倍。歴史的な長期平均が15〜20倍台とされるので、今の米国株はかなり高めの水準で取引されているということです。
ただし、PERが高い=悪いとは限りません。さっきのB台も、近くに大きな商業施設ができて人が集まりそうなら、高くても買いたい人が現れます。株も同じで、PERが高いのは「将来めちゃくちゃ成長すると期待されている」という意味でもあるんです。裏を返せば、その期待どおりに成長できなかったとき、株価が大きく下がるリスクも同時に抱えている、ということです。
もう一つ大事な言葉がEPS。1株あたりの利益のことです。学祭のたこ焼き屋で、クラスの利益が10億円、株の枚数が1,000万株なら、1株あたり100円稼いだ=EPS100円。株価はざっくり「EPS×期待感」で動きます。EPSが伸びている会社は期待されて株価が上がりやすい。今の米国株を引っ張ってきたのは、AIブームを追い風にEPSを大きく伸ばしてきた巨大テック企業たちでした。
それでも上がるとされる4つの強気材料
「割高なのに、なんで上がるって言われてるの?」と思いますよね。実は今、世界の主要な金融機関のほとんどが、2026年も米国株は上昇するという強気な予想を出しています。その根拠が、大きく4つあります。
① 企業のEPS(稼ぐ力)がまだ伸びる
株価が上がるかどうか、最終的に一番大事なのは「その会社が儲かっているか」です。S&P500全体のEPS成長率の予想を見ると、2026年は前年比プラス13.8%、2027年はさらにプラス14.4%。3年連続で二桁の利益成長が続く見通しなんです。割高でも業績が追いつけば、その割高さは徐々に解消される。これが強気派の基本ロジックです。スタバが高くても人気が殺到するように、「高い値段=将来の成長への前払い」というわけですね。
② AIへの巨額な設備投資
これがマジでデカい。AIインフラを支える巨大テック企業の設備投資が、とんでもない規模で膨らんでいます。
| 年 | 主要ハイテク8社の設備投資額の合計(推定) |
|---|---|
| 2023年 | 1,680億ドル |
| 2024年 | 2,560億ドル |
| 2025年 | 4,270億ドル |
| 2026年(予想) | 5,620億ドル |
この巨額の投資は、経済全体にお金をジャブジャブ流し込む効果を持ちます。半導体を作る企業、クラウドを動かすデータセンター、それを支える電力会社まで。AIへの投資は一部のテック企業だけの話じゃなく、めちゃくちゃ幅広い産業に恩恵をもたらすんです。
③ FRBの利下げと「眠れる1,000兆円」
FRB(アメリカの中央銀行)が2026年中に2回ほどの利下げをするという予想が出ています。金利が下がると、預金に置いておくのがもったいなくなり、投資家のお金が株式市場に流れ込みやすくなります。ここで注目したいのが、MMFという超安全な短期商品に積み上がった約1,000兆円という巨額のお金。利下げでこの利回りが下がれば、一部が株式市場に流れ込む可能性があります。1割動くだけでも100兆円。上昇圧力はめちゃくちゃ大きくなります。
④ トランプ大型減税の効果
2025年に成立した大型減税法案の効果が、2026年から本格的に経済へ波及し始める可能性があります。研究開発費の即時償却など、企業が利益を出しやすくなる税制優遇が含まれており、これがEPSをさらに押し上げる要因になるという見方です。
2026年末のS&P500目標値は、ドイツ銀行が8,000、JPモルガンが7,500、バークレイズが7,400、野村證券が7,300。平均すると約7,450ポイントで、現在の水準から約9%の上昇に相当します。過去3年のような爆上げではなく、緩やかな上昇が続くというのが大勢の見方です。
EPS成長・AI投資・利下げ・減税。この4つが噛み合って、米国株を支える「4本の柱」になっている。だから強気派は「まだまだ上がる」と言えるわけです。ただし、この予想はすべて「インフレが暴走しない」「AI投資が利益につながる」「利下げが予定どおり進む」という前提のうえに成り立っています。どれか一つでも崩れた瞬間、話は一変します。
強気相場を崩しかねない3つの爆弾
いい話だけを信じて突き進むのは、ちょっと危ない。みんないい話しか聞きたがりませんが、それがあなたのためになるとは限りません。ここからは慎重派が鳴らしている3つの警報です。これを知っておくことが、どんな砲弾が来てもあなたの資産を守る防壁になります。
① インフレ再燃+関税という着火剤
FRBが目指すインフレ率のゴールは2%。ところが2026年1月のCPI(消費者物価指数)は前年比プラス2.4%、FRBが重視するPCE価格指数はプラス2.9%と、いまだに目標を上回ったまま下げ止まっています。そこに新たな着火剤になりかねないのが、トランプ政権の関税政策です。世界一律の関税が引き上げられれば、輸入品が高くなって消費者の生活費を直撃し、相手国もやり返してくる。企業の利益は削られ、株価にとって重しになります。
② FRBが利下げできなくなる
これが一番こわいシナリオです。強気材料③で「利下げは追い風」とお伝えしましたが、もしインフレが再燃すれば、FRBは利下げどころか利上げというブレーキを踏まざるを得なくなります。金利が上がれば企業の借金返済の負担が増え、新規投資もストップ。最悪の場合、2026年の利下げがゼロになる可能性すらあります。追い風が一転して向かい風になるわけです。
③ AI投資の「結果」が問われる
2026年には主要企業だけでAIに5,000億ドル超、日本円で約75兆円規模を注ぎ込みます。ここから問われるのは「で、それだけかけて結局いくら儲かったの?」というシビアな結果です。近所のうどん屋が何千万円もかけて改装したのに客が増えていなかったら、「あの改装、意味あった?」と思いますよね。2026年1〜2月の決算で投資に見合った利益が出せなければ、期待が一気に失望に変わり、AI関連株が総崩れになる危険があります。
この3つは独立していません。関税でインフレが再燃し、焦ったFRBが利下げを見送り、資金繰りが苦しくなった企業がAI投資を引き上げる。ひとつの爆弾が次を誘爆させる「負のドミノ倒し」こそ、最も警戒すべきシナリオです。
ただ、僕がこの3つをお伝えしたのは、投資を諦めさせるためじゃありません。リスクを知るのは、牛乳を飲む前に賞味期限を確認するのと同じこと。知っておけば、慌てず冷静に行動できます。
AIが市場の構造そのものを変えている
もう一つ、市場の奥で起きている大きな変化があります。それは、AIが企業を「勝ち組」と「負け組」にくっきり分け始めていることです。
たとえば最近、まったく業種の違う超優良企業が、ほぼ同時に大きく売られる場面がありました。背景にあるのが、プログラミング(コーディング)までこなすAIの台頭です。AIは言ってみれば「人ではないエンジニアを格安で量産している」ようなもの。これによって、AIを裏で支えるインフラ企業、つまり半導体・クラウド・データセンター・電力といった業種にはお金が落ちやすくなります。世界中がAIを使えば使うほど儲かる、いわばインフラ屋です。
逆に置き換えられていくのが、ルール通りに動く巨大な事務処理や、人海戦術で回していた業務、古いシステムに依存したソフトウェア企業です。「あの会社の仕事、まるごとAIに持っていかれるんじゃないか」という恐怖が、株価に容赦なく反映され始めています。
ここで大事なのは、「じゃあAIインフラ企業を狙い撃ちすればいい」と単純には言えないことです。ハイテク株はこれまで上がりすぎた反動で利益確定の売りが出やすく、市場が混乱するほどリスク資産は買いづらくなります。本格的な上昇に戻るまで年単位かかることもあります。だからこそ、特定の業種に賭けるのではなく、色んな業種・地域に分散しておくのが得策なんです。
つまり、ハイテク一強の時代から「分散の時代」へ。これが今の米国株市場で静かに起きている、構造そのものの変化です。
50代60代が今やるべき具体的なアクション
ここまで読んで「結局どうすればいいの?」と思いますよね。答えはシンプルで、昔から言われている「長期・分散・積立」に尽きます。地味に聞こえますが、これだけ不確実性の高い相場でこそ、この3つが効いてきます。
分散こそが最強の防壁になる
いつバブルが弾けるかは、誰にも予測できません。バブルは数字じゃなく「人の感情」で動くからです。風船がいつ割れるか当てるゲームのようなもので、当てにいくだけムダ。だったら、どこがコケても大きくは沈まないように、最初から広く分散しておくのが賢いやり方です。米国一国に集中するS&P500より、全世界に広く分散するオルカン(全世界株式)のほうが、特定の国や業種の不調を吸収してくれます。
一括ではなく「時間を分散」する
そして50代60代に特に大事なのが、まとまったお金を一気に入れないこと。株価が歴史的に高い今、一括で入れた直後に下がると、精神的なダメージで積立を続けられなくなります。毎月コツコツ積み立てれば、高い時は少なく、安い時は多く買えて、買付単価が自然にならされます。退職金などのまとまったお金も、半年〜2年に分けて入れていくのがおすすめです。
- S&P500・オルカンなどのインデックスを軸にして、業種・地域を広く分散する
- 毎月一定額の積立を、相場が荒れても淡々と続ける
- まとまったお金は一括ではなく、時間を分けて投入する
- 資産が大きくなってきたら、債券なども組み合わせて守りを固める
暴落が怖いのは当然です。でも本当に怖いのは下がること自体ではなく、下がったときに慌てて売ってしまうこと。分散と積立は、その「感情の暴走」を構造で止めてくれる安全装置なんです。
米国株の見通しに関するよくある質問
Q. 米国株が割高な今、S&P500の積立はやめるべき?
A. やめる必要はありません。毎月一定額を積み立てる方法は、高い時は少なく、安い時は多く買えるので、割高な局面でも買付単価をならしてくれます。いつ弾けるか分からないバブルを当てにいくより、積立を淡々と続けるほうが現実的です。怖いのは積立をやめることより、暴落で慌てて売ってしまうことです。
Q. S&P500とオルカン、50代60代はどっちがいい?
A. 今の米国株はハイテク一強から分散へと流れが変わりつつあります。米国一国に集中するS&P500より、全世界に広く分散するオルカンのほうが、特定の国や業種がコケたときの揺れを抑えやすいです。どちらが正解ということはありませんが、守りを固めたい50代60代なら、分散の効くオルカンを軸にするのは理にかなっています。
Q. 今ある現金を一括でS&P500に入れるべき?
A. 株価が歴史的に高い水準にある今、まとまったお金を一度に入れるのはおすすめしません。入れた直後に下がると精神的なダメージが大きく、積立を続けられなくなるからです。半年〜2年ほどに分けて時間を分散しながら入れていくと、高値づかみのリスクを抑えられます。
まとめ:守りの基盤こそが最強の防壁
2026年の米国株 3つの核心
- 現在地は「高値圏の踊り場」
3年連続で上がった米国株はPER約27倍と割高。ただし業績が追いつけば上昇シナリオも十分あり得る。 - 負のドミノに警戒する
インフレ再燃+関税、FRBが利下げできない、AI投資の結果。この3つが連鎖する負の連鎖に注意。 - 最強の防壁は分散
ハイテク一強から分散の時代へ。S&P500やオルカンによる長期・分散・積立が、いちばん強固な守りになる。
結局のところ、米国株がいつ弾けるかを当てにいく必要はありません。攻めることばかり考えず、まず守りの基盤を固める。それが50代60代の資産形成の王道です。今日の一歩として、まずは自分の資産のうち「株式」と「現金・債券」の比率を書き出してみてください。数字にすると、自分がどれだけ守れているかが見えてきます。
あなたに合った投資の答えが知りたいですか?
今日お伝えしたのは一般論です。あなたの年齢・資産状況・年金額・リスク許容度によって、最適な株式比率や積立ペース、現金クッションの厚さはまったく変わります。一般論をそのまま当てはめて失敗する方が後を絶ちません。
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