「最高値=天井」は、実は勘違いです
多くの方が、最高値イコール天井、ここから下がるだけ、と考えてしまいます。でも、これがそもそもの勘違いなんです。
J.P.モルガンの興味深いデータがあります。S&P500が最高値をつけた、まさにその日に買った人の1年後の平均リターンはプラス9.6%。一方、最高値ではない普通の日に買った人はプラス9.4%。ほとんど変わりません。それどころか2年後で見ると、最高値の日に買ったほうがむしろ上回っていました。業績が良いからこそ高値がつくわけで、その後も伸びやすいということですね。
そもそも最高値は、思うほど珍しいものではありません。S&P500は2024年だけで57回も最高値を更新しています。だいたい4営業日に1回のペースです。これは伸び盛りの子どもの身体測定に似ています。測るたびに過去最高の身長を更新しますが、「今日が一番背が高いから明日縮む」と心配する人はいませんよね。伸びるものは記録を塗り替えながら育つ。それが当たり前なんです。
そして一番大事なのは、いつ買うかではなく、どれだけ長く持ち続けるかです。過去30年、S&P500をただ持ち続けた人の資産は約19倍になりました。ところが、その間で一番上がった日のトップ10、たった10日を逃すだけで、最終資産は半分以下に減ってしまいます。しかもその好日の多くは、下落のさなかや直後に集中しているんです。怖くて売って逃げた人ほど、回復の一番おいしいところを取り逃しやすい。だから、慌てて売らずに持ち続ける。これだけで成果が安定しやすくなります。
AIの集中という不安をフラットに見る
とはいえ、今の最高値はAI関連で盛り上がっているだけで、勢いが止まったら一気に崩れるのでは——そんな不安もありますよね。ここもフラットに見ましょう。
たしかに今の高値は、AIをけん引する一部のハイテク企業が引っ張っているのは事実です。ただ、過去の過熱期とは違う点もあります。かつては利益の出ていない会社にまで期待だけでお金が流れ込んだ局面がありましたが、今をけん引する会社は実際に巨額の利益を出しています。中身が伴っている面があるんですね。
ただし、知っておくべき事実もあります。S&P500は本来500社に分散されているはずですが、今は上位10社ほどで時価総額の4割前後を占めています。これは、500種類の具が入っていると思って頼んだ幕の内弁当のおかずの半分を、大きなハンバーグ1個が占めていた、みたいな状態です。彩りは豊かに見えても、そのハンバーグの調子次第で弁当全体の印象が左右される。分散が効きにくくなっているのは、知っておいて損のない事実です。割高感を測るシラーPERも高めの水準にあるのは本当です。
ここで、見方が真っ二つに割れています。利益が伴うから正当だ、という人と、集中しすぎだ、という人。どちらにもちゃんとした根拠があります。だからこそ、はっきりお伝えします。相場の転換点を正確に当てることは、誰にもできません。お金の専門家でさえ毎年のように予想を外してきました。だから、一点張り、全部つぎ込む、という入り方は避ける。これが僕の考えです。
初心者はオルカン1本、怖いなら積立でいい
じゃあ僕たち初心者はどうすればいいのか。結論はシンプルです。オルカン、つまり全世界株式1本でいいです。
ここまで米国のS&P500の話をしてきて、急に全世界?と思うかもしれません。でも意味があります。オルカンは世界中の株にまるごと分散する商品で、その中身のおよそ65%はアメリカです。S&P500のおいしいところは実質ちゃんと内包しつつ、ヨーロッパや日本、新興国にも自動で分散される。卵を1つのカゴに盛らない、という投資の基本を、一番手軽に実践できるのがオルカンなんです。
そのうえで、今が高くて怖いという方には、時間を分けて入る積立をおすすめします。正直に言うと、長期で余剰資金の範囲なら、統計的には今すぐまとめて買う一括のほうが有利になりやすいです。世界的な運用会社バンガードの研究でも、一括が積立を約3回に2回上回りました。市場に居る時間が長いほど複利が効くからですね。
でも、数字がすべてではありません。実際の歴史で見てみましょう。2007年、リーマンショックの直前の最高値圏で、1,000万円を全額まとめて投資してしまった人がいたとします。考えうる中で、かなり厳しいタイミングですよね。そこから株価は、2007年秋のピークから2009年春の大底まで、1年半近くかけて最大でおよそ5割から6割、率にしてマイナス57%ほど下がりました。1,000万円が一時430万円ほどまで落ち込んだ計算です。
でも、ここでぐっとこらえて売らなかった人は、だいたい5年ほどで含み損を抜け出し、19年後の今、その資産は約7倍に育っていました。あの厳しいタイミングで買った人ですら、です。下落を本当の損として確定させたのは、底値で売ってしまった人だけ。持ち続けた人にとっては、ただの通過点でしかなかったんですね。
熱いお風呂にいきなり全身でドボンと飛び込むのは怖いから、足先から少しずつ慣らして入る。最後の気持ちよさは結局同じです。怖いなら半年から1年かけて分けて買う。一括との最終差はせいぜい数%で、夜ぐっすり眠れる安心料としては、むしろ安いくらいだと僕は思います。
そして50代・60代の守りの世代には、もう一段の配慮を。運用できる期間が相対的に短いぶん、攻めと守りのバランスが大事です。イメージは3階建て。1階に生活防衛資金を現金で、2階にコア資産のオルカン、3階に必要に応じて値動きのおだやかな債券。この土台があれば、下落が来ても崩れにくくなります。
ここで触れた数値は記事作成時点の一例です。指数の構成比やシラーPER、各種データは時期によって変わります。実際に判断する際は、最新の数値を確認するようにしてください。
S&P500の高値づかみに関するよくある質問
Q. 今は高すぎるので、もっと下がるまで待つべきですか?
A. 待っている間の機会損失のほうが大きくなることが多いです。タイミングは誰にも当てられませんし、最高値はこれからも何度も更新される可能性があります。怖いなら、待つのではなく積立で少しずつ入るのが現実的な答えです。
Q. S&P500とオルカン、初心者はどちらを選べばいいですか?
A. 初心者はオルカンをおすすめします。中身の約65%は米国なのでS&P500のおいしさは取り込みつつ、世界に分散できるぶん、米国集中のブレをやわらげられます。
まとめ:最高値に振り回されないために
今日のポイントおさらい
- 最高値は天井ではない。データ上、そこから買っても長期では平均してプラス
- 相場の転換点は誰にも当てられない。だから一点張りは避ける
- 初心者はオルカン1本、怖ければ積立で時間を分散
- 守りの世代は、現金・株式・債券の3階建てでバランスを取る
この3つを押さえておけば、最高値というニュースに、必要以上におびえることはなくなります。今の銀行残高をどう運用すべきか迷っている方は、ぜひ一度、お金の専門家の視点を取り入れてみてください。
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