50代がハマりやすい「投資信託の落とし穴」とは
50代・60代の資産運用は、20代・30代の若い世代とは前提が違います。若い世代には「時間」という大きな武器があり、下落が起きても10年、20年かけて回復を待つことができます。一方、定年が視野に入ってきた世代は、回復を待てる時間が相対的に短くなります。だからこそ、商品選びを丁寧にしたいんですね。
落とし穴1:窓口で勧められるまま買ってしまう
「退職金が入ったから」「長年付き合いのあるメインバンクだから安心だろう」と、とりあえず銀行の窓口へ相談に行くのは、あまりおすすめできません。
なぜなら、金融機関の窓口で勧められる商品の中には、「あなたにとって一番良い商品」ではなく、「金融機関にとって利益の大きい商品」が含まれることがあるからです。金融機関もビジネスですから、販売手数料の高い商品を勧めたい事情があるのは自然なこと。だからこそ、勧められたものをそのまま買うのではなく、自分で中身を確認する習慣が大切です。
落とし穴2:「毎月分配型」という甘い言葉
シニア層に人気なのが「毎月分配型」の投資信託です。「毎月お小遣いのように現金が入ってくる」と聞くと魅力的に感じますが、ここには注意したい点があります。
運用益が十分に出ていないのに分配金を支払っているケースがあり、自分が預けたお金の一部を、自分に払い戻しているだけという状態(タコ足配当)になっている商品も見られます。これでは資産が増えにくく、気づけば元本が目減りしていた、ということにもなりかねません。
なぜ多くの投資信託は「選ばなくていい」のか
では、なぜ「ごく一握りでいい」と言えるのでしょうか。日本で購入できる投資信託は約6,000本以上ありますが、将来の資産形成に向く商品は限られています。その理由はシンプルです。
隠れたコスト(信託報酬)が積み上がる
投資信託には、買うときの「買付手数料」だけでなく、持っている間ずっとかかり続ける「信託報酬(管理費用)」というコストがあります。
例えば、信託報酬が年1.5%の商品と、年0.1%の商品を比べてみましょう。1,000万円を10年間運用した場合、コストだけで100万円以上もの差が生まれる計算になります。派手な広告を出している商品や、複雑な仕組みのテーマ型(特定の分野に絞ったもの)の中には、この信託報酬が高めに設定されているものもあります。将来のリターンは誰にも約束できませんが、コストは確実にかかるもの。だからこそ、コストの低さは大事な判断軸になります。
高コストでも市場平均に届かないことがある
専門家が銘柄を選んで市場平均を上回ることを目指すタイプの商品(アクティブ型)の中には、長期で見ると、市場全体に連動するだけのインデックスファンドの成績に届かなかった例も少なくない、というデータがあります。
高いコストを払って運用を任せても、必ずしも良い結果になるとは限らない。だからこそ、低コストでシンプルな商品を中心に考えるのが、初心者にとっては分かりやすい方針なのです。
50代・60代が選ぶべき投資の「基本方針」
では、コストの高い商品を避けたうえで、50代・60代は何を選べばいいのでしょうか。僕の基本方針は、とてもシンプルです。迷っている方は、次のステップに沿って進めてみてください。
ステップ1:初心者は「とりあえずオルカン」でOK
投資が初めての方や、何を選べばいいか分からない方は、全世界の株式に分散投資ができる「オルカン」を愚直に積み立てるだけで十分です。
オルカンは信託報酬が業界最安水準でありながら、これ1本で世界中の成長企業に分散投資が完了します。窓口で勧められる高コストの商品を選ぶくらいなら、まずはオルカンを候補にしてみてください。最初は少額から始め、市場の値動きに慣れることが第一歩です。
ステップ2:資産が育ってきたら「債券」を組み合わせる
数年コツコツと積立を続け、投資資産がまとまった額(数百万円〜)になってきたら、次のステップです。ここで意識したいのが「債券」を組み合わせて、値動きをマイルドにすることです。
オルカンはあくまで「株式100%」の投資信託です。株式はリターンが期待できる反面、経済危機が起きれば一時的に資産が大きく目減りすることもあります。資産を取り崩す時期が視野に入ってきた50代・60代が「株式100%」のまま進むのは、リスクをやや取りすぎな面があります。そこで、株式とは違う値動きをする「比較的安定した債券」を加えることで、下落時のクッションをつくるわけです。
「増やすフェーズ(オルカン)」から、「守りながら増やすフェーズ(オルカン+債券)」へ。これが50代・60代の王道の進め方です。
ここで触れた信託報酬の水準や本数は、記事作成時点の一例です。具体的な数値や取り扱い商品は変わることがあるので、購入前に商品ページの「信託報酬」を必ず確認してください。
50代からの新NISAに関するよくある質問(Q&A)
Q. 今から新NISAを始めても遅くないですか?
A. まったく遅くありません。「人生100年時代」と言われる今、50代からでも運用期間は20年〜30年と十分にあります。ただし、20代と同じようなハイリスクな投資ではなく、前述したように成長(株式)と守り(債券)を意識した手堅い運用を心がけることが大切です。
Q. 新NISAの枠(1,800万円)は早く埋めた方がいいですか?
A. 焦って無理に埋める必要はありません。手元の現金を一気に投資に回すのは、気持ちの面でも負担が大きくなりがちです。まずは生活防衛資金(絶対に減らしてはいけない現金)を確保し、残りの余裕資金で少額から毎月コツコツと積み立てていくのがおすすめです。
まとめ:正しい商品選びと、年齢に応じたリスク管理
今日のポイントおさらい
- 窓口の「おすすめ」をそのまま買わず、自分で中身(信託報酬)を確認する
- 初心者は低コストの「オルカン」からスタートする
- 資産が育ってきたら「債券」を組み合わせて守りを固める
- 枠は焦って埋めず、生活防衛資金を確保してから余裕資金で積み立てる
新NISAのスタートで情報が溢れていますが、やるべきことは実はシンプルです。周りに合わせて焦って飛びつき、よく分からない商品を選んでしまうことこそ、避けたい入り口です。この基本方針を守るだけでも、老後資金の安心感はぐっと高まります。「自分の場合はオルカンと債券の比率をどうすべきか分からない」「今の銀行残高でどう運用すべきか迷っている」という方は、ぜひ一度、お金の専門家の視点を取り入れてみてください。
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