まず前提として、2025年の主要な指数を振り返ると、新興国株式インデックスは円建てで大きく上昇したと言われています。同じ年のオルカンや日経平均、FANG+と比べても、新興国のパフォーマンスが上回った場面がありました。「新興国はずっと低迷している」という従来のイメージとは、少し違う動きが出てきたわけです。とはいえ、これは過去の一時点の話。値動きは荒いので、ここから先は「仕組み」を理解したうえで判断していきましょう。
新興国株式インデックスとは?初心者が知るべき基礎知識
まず「新興国株式インデックスって何?」という基本から見ていきましょう。新興国株式インデックスファンドの多くは、「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」という指数に連動するよう作られています。これは、世界中の投資家が新興国市場の動きを見る際によく使う代表的な物差しです。日本でも、この指数に連動する低コストのインデックスファンドが複数販売されており、新NISAでも購入できます。
その中身はどうなっているのでしょうか。新興国と言っても世界には多くの国がありますが、この指数の約75%(4分の3)はアジアの国々で構成されています。具体的には、中国、インド、台湾、韓国の4カ国がメインです。ここにブラジル、サウジアラビア、南アフリカ、メキシコなどが加わり、全体で20カ国以上に分散されています。
「韓国はもう先進国では?」と思った方、鋭いです。経済や技術レベルで見れば韓国は先進国ですが、指数のルール上、まだ新興国カテゴリーに入っています。これは投資家にとっては、世界的に知られる優良企業を新興国という枠組みで取り込めるという面があります。
コストの面でも、日本のインデックスファンドは優秀です。海外ETFでは経費率が0.7%前後と高めになりがちですが、国内の代表的な新興国株式インデックスファンドは信託報酬が年0.15%程度(実質コストを含めても0.2%台)に収まる商品もあります。個人で20カ国以上に投資する手間を考えれば、低コストで分散できるのは大きな利点です。
組み入れ銘柄の上位には、台湾の半導体大手、中国のネットサービス企業、韓国の半導体・スマホ大手、中国の通販・クラウド企業、インドのエネルギー・通信大手などが並びます。いずれも世界的に名の知られた企業ばかりで、今の新興国インデックスは、昔の「資源やエネルギー頼み」ではなく、ハイテク企業が集まる成長性のあるファンドという側面を持っています。
なぜ今、割安感が注目されているのか
新興国株が注目される理由はシンプルで、まだ相対的に割安と見られているからです。投資の基本は「安く買って、高く売る」。どれほど良い企業でも、株価が高すぎる時に買うと利益を出しにくくなります。現在、米国株(S&P500など)のPER(株価収益率)は27倍近くまで買われており、歴史的にも高めの水準です。一方で、新興国株全体のPERは11倍程度と、控えめな評価にとどまっています。
ここで、中国株や新興国株を考える上で避けて通れない「感情」の話をします。ニュースでは台湾有事の懸念、不動産不況、日中対立など、ネガティブな話題が目立ち、「中国には投資したくない」と感じる方も多いと思います。日本人としてそうした感情を抱くのは自然なことです。ストレスを感じながら投資をするのが合わない場合は、無理に新興国株を組み入れる必要はありません。投資は自分の安心のためにやるものですから、オルカンだけを愚直に積み立てるのも立派な正解です(オルカンにも新興国は1割ほど含まれています)。
一方で、「感情を一旦横に置いて、数字で判断したい」のであれば、新興国株は知っておく価値があります。中国企業は、かつての模倣型から、内製型のテック企業へと進化を遂げてきました。14億人という巨大な内需を抱え、ネット通販・決済・動画が国内で完結し、そこから生まれる膨大なデータをAIに活かすことで、サービスの進化が速くなっています。EV大手のように、主要部品を自社で内製化し、コスト競争力と技術力を高めている企業も出てきました。こうした企業の株価が、PER11倍という控えめな評価に置かれているのが現状です。
AI半導体ブームと新興国の関係
見逃せないのが、AI半導体ブームの追い風を新興国株がダイレクトに受ける構造になっている点です。新興国株式インデックスの約10〜12%を占める第1位の銘柄は、台湾の半導体大手です。AIブームの主役として注目される米国の半導体設計企業がどれほど話題でも、その高性能AIチップを実際に製造しているのはこの台湾企業です。スマートフォンの心臓部となるチップも、ここがなければ作れません。AI革命が続く限り、製造ラインはフル稼働が続きやすい構造です。
さらに、韓国の半導体大手は、AIの高速処理に欠かせない高性能メモリで世界シェアの大半を握っています。つまり「AIが伸びる=新興国のハイテク企業が伸びる」という強い結びつきができているのです。
米国の人気テック企業を高いPERで買うのとは別のアプローチとして、それらを陰で支える台湾・韓国の半導体大手を、新興国インデックスを通じて分散して保有するという考え方もあります。あくまで指数の構成を通じた間接的な保有であり、個別銘柄を名指しで推奨するものではありません。
ポートフォリオへの組み入れ方(3パターン)
「新興国株の魅力はわかった、すぐ全財産を入れよう」というのは、少し落ち着きましょう。資産形成は、できるだけシンプルに運用するのが王道です。値動きの大きさに一喜一憂したくない方は、ポートフォリオを複雑にする必要はありません。オルカンやS&P500を信じて積み立て続けるのも立派な正解です。
新興国株はリターンが大きい反面、値動きも荒いという特徴があります。今後10年以上、腰を据えて続ける前提で、組み入れを考えるなら、次の3つのパターンが参考になります。
パターン①:オルカン + 新興国
オルカンをメインにしつつ、新興国インデックスを10〜20%加えるスタイルです。オルカンにも新興国は1割ほど含まれますが、世界の実体経済(GDP)に占める新興国のシェアは約6割に達します。別枠で少し足すことで、より世界経済の実態に近い配分に近づけられます。
パターン②:S&P500 + 新興国
米国中心のS&P500をコアにしつつ、リスク分散と成長エンジンとして新興国を加えるスタイルです。米国株と新興国株は異なる値動きをする傾向があり、通貨の分散(ドルとアジア通貨など)にもなります。米国の割高感が意識された局面での備えになります。
パターン③:S&P500 + 日本株 + 新興国
米国を軸にしつつ、デフレ脱却が進む日本株、長期の成長余地がある新興国株を組み合わせるスタイルです。地域特性や成長サイクルが異なるため、分散効果が高まりやすいのが特徴です。
若い方やリスクを取りたい方は新興国を3割近くまで増やすという選択もありますが、守りを重視したいシニア世代は無理に足さず、新興国が最初から1割入っているオルカン一本でいくのが健全です。大切なのは、一度決めた比率を保つこと。「上がったから買い増し、下がったから売る」ではなく、下がった地域を買い足し、上がった地域を一部売る「リバランス」を淡々と続けることが、長期投資のコツです。
よくある質問とまとめ
Q. 中国やインドの個別株を直接買った方が儲かりますか?
個人投資家が新興国の個別株に手を出すのは、あまりおすすめしません。新興国の個別企業は、現地の法改正や規制、企業ごとの事情などが、日本や米国に比べて読みにくいことがあります。情報収集も難しいため、丸ごと分散されたインデックスファンドで、パッケージとして保有するのが安心な選択です。
Q. 新興国インデックスはどの口座で買うべき?
新NISA口座(つみたて投資枠・成長投資枠)を活用するのがよいでしょう。代表的な新興国株式インデックスファンドは、主要なネット証券で、新NISAのどちらの枠でも購入できます。運用益にかかる約20%の税金が非課税になるため、新NISA枠を優先的に使いましょう。
新興国インデックスの押さえどころ
- 割安感がカギ
米国株が高めの中、新興国はPER11倍程度と控えめな評価。 - 中身はハイテク中心
台湾・韓国の半導体大手など、AI関連の構成比が高い。 - 低コストで分散できる
信託報酬0.15%程度の商品もあり、20カ国以上に一括投資。 - 感情と数字を切り分ける
合わない場合は無理に入れず、オルカン一本でもよい。 - コア・サテライトの徹底
コアはオルカン等、新興国は10〜20%のサテライトに留める。
新興国投資は値動きが大きい場面もありますが、「実力に対して割安」であることは一つの魅力です。視線を少し横にずらし、新興国の未来に種を蒔いておく。10年後に「あの時知っておいてよかった」と思える日を信じて、決めた比率を守りながらコツコツ続けていきましょう。
本記事で触れた指数・企業・ファンドは、市場で起きている事実や一般的な考え方の紹介であり、特定の銘柄・商品の購入を推奨するものではありません。最終的な判断は、ご自身のリスク許容度に合わせて行ってください。
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