同じ財布でも、税金の計算へ入る数字は違う
たとえば、二つの大会の得点表を別々に管理するイメージです。A大会で20点失い、B大会で10点取っても、B大会の得点からA大会の失点を勝手に引けません。NISAと課税口座も、家計では一緒の資産でも税金の計算では区分を確かめる必要があるんですね。
ただし、例えは区分を混ぜないためのものです。課税口座同士なら条件により損失と利益を合わせられる場合があり、口座をまたぐ計算が全部禁止なのではありません。NISAの損失を課税口座へ持ち込めない、という境目を押さえます。[1]
課税口座の上場株式等の譲渡所得は、売却代金から取得費や委託手数料等を引いて計算します。画面の「資産総額が先月より減った」という数字だけでは、その年に税金計算へ入る売却損益は分かりません。取得額、売却額、費用と口座区分を分けて読みましょう。[2]
20万円の損と10万円の利益。全体は赤字でも課税利益が残る
2026年中の二取引・手数料等なしの説明例。家計全体は−10万円でも税計算は別です。
2026年中に、NISAで100万円で買った商品を80万円で売り、特定口座で別の商品に10万円の売却益が出たと仮定します。手数料・配当・ほかの取引・繰越損失はなく、特定口座の10万円は取得費を差し引いた後の利益とします。NISAの売却損は80−100=マイナス20万円です。
家計全体のこの二取引の損益は、マイナス20万円+10万円=マイナス10万円。でも、NISAの20万円の損を特定口座の10万円から差し引けません。この条件では課税対象の譲渡益10万円が残ります。一般的な税率20.315%を単純に掛けると2万315円。端数処理や実際の徴収・申告を再現したものではありません。[1][2]
この例は「NISAを使うと必ず損」という意味でも、「売れば税金が返る」という意味でもありません。家計の成績表と税金の計算表の列を分けるための説明です。実際には同じ年のほかの課税取引や口座の源泉徴収区分、過去からの繰越損失も確認します。
| 確認する数字 | 仮定例 | 扱い |
|---|---|---|
| NISAの取得額と売却額 | 100万円→80万円 | 売却損20万円は他口座と通算不可 |
| 特定口座の譲渡益 | 10万円 | この例では課税対象の利益が残る |
| 家計全体の損益 | −20+10=−10万円 | 税金計算の利益とは別 |
| 単純な税率計算 | 10万円×20.315%=20,315円 | 実際の税額・端数処理とは区別 |
翌年へ繰り越せる損失と、NISAの損失は別
「今年引けないなら来年に回せばよい?」と思うかもしれません。NISA内の譲渡損失は、損失の繰越控除もできません。翌年の特定口座の利益から引く材料として保存しても、対象にはならない点に注意してください。[1]
一方、一定の課税口座で生じた上場株式等の譲渡損失には、要件を満たした確定申告により翌年以後3年間の繰越控除が使える場合があります。制度名が似ていても、どの口座の損かを確かめるのが先です。条件と継続申告が必要で、単に損失画面を保存するだけでは手続きが済みません。[1]
NISAで現在値が下がった状態と、実際に売却して生じた損失も分けて記録します。この記事は含み損のある商品を売るか持つかの判断を勧めるものではありません。目的、使う時期、分散や許容できる値動きを見直す課題は、税金の計算と別に考えましょう。
投資枠が戻ることは、損失が埋まることではない
新NISAの商品を売ると、翌年以降に売却した商品の簿価、つまり取得金額の分だけ非課税保有限度額を再利用できます。先ほどの100万円で買って80万円で売る例なら、再利用の基準は80万円ではなく100万円です。[3]
ここで戻るのは「非課税で保有できる枠」で、失った20万円が口座へ振り込まれるわけではありません。また、売却した年の年間投資枠がその場で増える意味でもありません。新たに投資する年の年間投資枠の範囲など、制度の条件を確認します。[3]
枠を再利用できるからといって、家計で使うお金を追加投資する必要はありません。損失を取り戻そうとして金額を増やす前に、何年後に使う資金かを見直す。税金の扱い、投資枠、実際の手元資金という三つの数字を別々にすると、判断を急がずに済みます。
今日の確認は、口座区分と売却済みの数字から
自分で作る確認用紙
公式書類の様式ではなく確認用メモです。個別の適用要件や申告要否は別途確認します。
今日の作業は、取引履歴から口座区分、取得額、売却額、手数料、取引年を一枚のメモへ転記し、NISA分と課税口座分を別欄にすることです。まだ売っていない商品の評価損益は別欄へ置き、申告用の売却損益と混ぜないでください。
分からないときは、NISAか特定口座か、同じ年のほかの取引があるか、源泉徴収の有無をそろえて確認します。画面の区分や取引記録は金融機関へ、申告への反映や通算・繰越の適用は税務署や税理士へ。個別の税額や申告要否はこの記事だけで決められません。
「合計すると赤字なのに税金がある」という疑問は、計算が間違っているとは限りません。別の成績表を一枚に足して見ていた可能性があります。まず列を分けて自分の数字をつかむ。今日は売買を増やさず、記録の整理だけでも十分な一歩です。
よくある質問
NISAの含み損を申告すれば還付されますか?
含み損の表示だけで還付にはつながりません。売却して生じたNISAの損失も損益通算・繰越控除の対象外です。課税口座に別の対象損失がある場合は、それを分けて要件を確認します。[1]
100万円分の枠が再利用できたら、100万円を必ず買うべきですか?
枠は利用可能な上限であって、買付の義務ではありません。売却した資金の額、使う予定、投資の目的を先に確認します。枠の回復と家計の損失回復を同じ意味で扱わないでください。[3]
