残高の増加と、買い物かごの中身は別に見る
金額そのものの増え方を見るのが名目、物価の変化を調整して買える量を見るのが実質という整理です。日本銀行の教材も、物価が上がると同じ金額で買えるものが減り、お金の価値が低下することを説明しています。[1]
買い物かごに、昨年と同じ種類・量の商品を詰める場面を考えてください。財布のお金が少し増えても、かご一杯の値段がそれ以上に上がれば、同じ中身を買うには足りません。財布の増え方が名目の増加、同じかごを何杯買えるかが購買力に対応します。
ただし、この例えは商品の種類・量・品質をそろえた場合です。買う量を増やしたり高級品へ替えたりした分まで、物価上昇とひとまとめにはできません。総務省の消費者物価指数も、生活様式や好みの変化による生活費の増加そのものを測る指数ではないと説明しています。[2]
1年間で2%増え、物価が3%上がる仮定なら
ここでは、年初の資産100万円が、追加の入金・出金をせず、税金と費用を反映した後に1年間で102万円になったと仮定します。同じ1年間の物価上昇率を仮に3%とします。実際の商品利回りや今年の物価を示す数字ではありません。
年初と同じ購買力の単位に戻すと、1,020,000円÷1.03=約990,291円です。年初の100万円より、基準年の金額に換算して約9,709円少ないことになります。口座から9,709円が引かれたという意味ではありません。
増減率で表す計算は、(1.02÷1.03-1)×100=約-0.97%です。資産は名目で2%増えていても、この仮定では実質の購買力が約0.97%下がります。「2%-3%=-1%」は概算で、厳密な比率計算と少し異なります。
期間・入出金・物価の種類をそろえてから比べる
まず、資産側と物価側の期間を同じにします。資産の年初から年末までの増加率に、ある一か月の物価の前月比を組み合わせると、比較する期間がずれてしまいます。使った指数名と開始・終了時点もメモしてください。
次に、追加の積立や取り崩しを確認します。100万円の口座へ10万円を追加し、110万円になっただけなら、その10万円を運用益とは呼べません。入出金があると単純な残高比では運用利回りを出せないため、先の例と分けて考えます。
物価にも種類があります。消費者物価指数は、一定の消費構造を基に財・サービスの平均的な価格変化を測ります。自分がよく買う食品や、住居費の割合が違えば、家計の実感と全国の指数が一致しないこともあります。[2][3]
同じ商品・量・品質の価格を家計メモで比べることは、暮らしへの影響を考える補助になります。ただし、少数の買い物から独自に計算した上昇率を、全国の物価指数や正式な運用成績と呼ばないようにしましょう。
実質でマイナスでも、必要な現金を急いで動かさない
実質の数字がマイナスだからといって、すぐに高い利回りの商品へ乗り換える答えは出ません。投資には値下がりがあり、近く使う資金を価格変動のある商品へ移すと、必要な時期に足りなくなる可能性があります。
今日の確認は、比較する開始日・終了日、入出金の有無、税・費用反映後の増減、使う物価指数を一枚に書き出すことです。入出金がない同じ1年間なら、増加率を倍率に直して物価の倍率で割り、残高の増加と購買力の増加を区別しましょう。
物価の最新値を確認するときは、総務省統計局の公表日と対象月を読みます。今回の2%と3%は計算のための仮定です。商品選びを急ぐ前に、使う時期と必要な金額を家計の計画へ戻して考えてみてください。[3]
よくある質問
価格が変わらなくても、商品の内容量が減ったらどう考えますか?
家計では、同じ量にそろえた価格も確認すると比較しやすくなります。一方、消費者物価指数は品質や容量の変更に対する調整も行う統計です。少数商品の値札だけで、指数全体の誤りと判断しないでください。[2]
