最初に書くのは残高ではなく、毎月の収入と支出
金融庁は家計管理の基本として、収入と支出を把握し、黒字にして貯蓄することを挙げています。[1] まずは給与や年金などの手取り収入と、普段の生活に必要なお金を並べます。
50代・60代では、今月の収支だけでなく、退職や働き方の変更でいつ収入が変わるかも大切です。現在は黒字でも、退職後に毎月取り崩すなら、その期間の不足を別に考える必要があります。
年金を見込むときも、額面と手取りを混ぜないようにします。分からない金額は『未確認』と書き、都合のよい数字で埋めないこと。メモを完成させるより、分からないところが見えることに意味があります。
- 毎月の手取り収入:給与・年金など。臨時収入は別に記録する。
- 毎月の生活費:食費・住居費・光熱費・通信費など。
- 収入が変わる時期:退職、再雇用の終了、年金受給開始など。
- 確認が必要な項目:税金・社会保険料・借入返済など。
年払いの費用を、月の生活費から見落とさない
毎月の家計が黒字でも、年払いの保険料や固定資産税、車検などを払う月に預金が減ることがあります。この支出を忘れて積立額を決めると、後から取り崩しが必要になります。
例えば、年単位の費用が合計36万円なら、月換算では3万円です。普段の生活費が月25万円でも、年払いを含む生活費は月28万円という見方ができます。これは計算例であり、一般家庭の平均額ではありません。
年払い分を月換算で生活費に含めたら、同じ期間の計算でさらに36万円を差し引かないようにします。『月に含める』か『年の別枠で計上する』か、どちらかに統一しましょう。なお、支払日が先に来る場合の口座残高は別途確認が必要です。
予定支出と緊急予備費を、別の欄にする
予定支出は、住宅修繕や車の買い替えなど、時期と金額をある程度見積もれるお金です。一方の緊急予備費は、予想外の出費や収入減に備えるためのもの。同じ『万一のお金』としてまとめると、何に備えているのか分からなくなります。
予備費に万人共通の正解額はありません。収入の安定性、住まい、家族の支援状況、健康上の事情などが違うからです。『生活費の何か月分』という数字を使う場合も、それを自分の家計で仮置きした理由を書き添えましょう。
投資信託や株式には元本割れの可能性があります。[1] 予定どおりの金額が必要な支出を、値上がりしないと払えない状態にしないことを優先してください。
架空の家計で、現金の役割を分けてみる
ここからは整理方法を示すための架空の例です。相談事例でも、誰にでも適した金額でもありません。夫婦で預金800万円、手取り収入が月23万円、年払いを月換算した生活費が月28万円、と仮定します。
さらに、この収支が24か月続いた後は収支が均衡する、2年以内の予定支出が100万円ある、緊急予備費は別途150万円と仮置きします。実際には24か月後も赤字が続くなら、その先の不足も追加で考えなければなりません。
| 項目 | 計算・仮定 | 金額 |
|---|---|---|
| 預金残高 | 夫婦で保有する預金 | 800万円 |
| 24か月の収支不足 | (月28万円 − 月23万円)×24か月 | 120万円 |
| 予定支出 | 生活費に含めていない修繕など | 100万円 |
| 緊急予備費 | 他の欄とは別の予備費として仮置き | 150万円 |
| 差し引き残額 | 800 − 120 − 100 − 150 | 430万円 |
残ったお金を、すぐ全額投資に回さない
差し引いた残額が見えたら、次はそのお金をいつ使うかを考えます。老後の遠い将来の生活費なのか、数年後の住み替え費用なのかで、値下がりを受け入れられる期間は変わります。
NISAは運用益などが非課税になる制度で、投資の損失をなくす仕組みではありません。[2] 『NISAだから安心』ではなく、家計の中でどの役割のお金を使うのかを先に決めましょう。
毎月の積立を考える場合も、預金の残額だけでなく毎月の収支を見直します。この例のように取り崩しが続く家計で、新たな積立まで始めるなら、預金が減る速さがどう変わるかの確認が必要です。
今日することは、積立額を決め切ることではありません。『年払いを含めた生活費』『収入が変わる時期』『予定支出』『予備費の理由』を埋めてみること。そのメモが、投資を始めるかどうかを落ち着いて考える土台になります。
よくある質問
生活費の半年分を残せば十分ですか?
それだけでは判断できません。収入が途切れる期間や予定支出、家族の事情によって必要額は変わります。まず何に備える現金なのかを書き分けてください。
預金口座を必ず何個も作る必要がありますか?
いいえ。最初は一枚のメモでも構いません。実際の口座を増やす前に、同じ残高を複数の目的に割り当てていないかを確認することが先です。
家計が赤字なら、投資で補えばよいですか?
投資収益は確定していないので、生活費の不足を必ず埋められる前提にはできません。まず収支と支出予定を確認し、取り崩しに耐えられる計画を考えましょう。
